The colors of Kyoto
京の彩り

今様いまよう」から感じる、平安の風雅~2012年10月~

  • 京の彩り
  • 「今様(いまよう)」から感じる、平安の風雅 ~2012年10月~
写真ご提供:法住寺様

写真ご提供:法住寺様

平安時代後期、多くの人々が夢中になった歌に「今様(いまよう)」があります。
「今様」と言っても、ピンとこない方が多いかもしれませんね。
今年のNHK大河ドラマ「平清盛」で繰り返し歌われている

♪遊びをせんとや 生まれけむ・・・

という歌をご存知でしょうか。
これが、「今様」の中で最も有名な歌です。

また、「今様」では歌に合わせて、優雅な舞いが舞われていたそうです。 実は現代でも、右の写真の通り「今様歌合わせの会」が京都東山の法住寺で毎年10月に行われていて、平安時代さながらの風雅な雰囲気を楽しむことができます。

今回は、「今様」についての簡単なご説明と、「今様歌合わせの会」についてご紹介します。

「今様」とは?

平安時代後期に流行した歌謡で、「今様」という言葉は「当世風」「今風」などを意味します。
つまり「今様」とは、「今、はやりの歌」というような意味になります。

「今様」は、それまでにあった和讃(わさん、和語を用いた民衆的な仏教歌謡)、 催馬楽(さいばら、民謡などを歌曲化したもの)など多くの芸能から影響を受けながらも、それまでにない自由な形を特徴としています。
つまり、それまでの芸能が常套的な抒情表現であったのに比べ、「今様」は自由で素朴な歌いぶりをその身上としたため、 貴族・武士・庶民など多くの人々が夢中になったそうです。

歌詞は七・五・七・五の「七五調」など語呂や響きが良く、歌い方は一つの音を長くのばして、ゆらぎをもたせる独特のものだったそうです。
鼓、笛、笙(しょう)などの雅楽器を伴奏に、舞いながら歌われていました。

鎌倉時代になると「今様」は衰退しますが、その歌は小唄(こうた)や端唄(はうた)、都々逸(どどいつ)など江戸時代の歌に、 そして舞いは能や、お寺の祭りで行われる「踊り念仏」に影響を与えたと言われています。

「今様」と後白河法皇

「今様」に夢中になった代表者が、後白河法皇です。 後白河法皇がどれほど「今様」を愛していたか、それがわかるエピソードをいくつかご紹介しましょう。

貴族だけでなく、庶民の中にも「今様」の名手がいると聞くと、その歌を聞きたいがために御所に招いたという話が残っています。
また、後白河法皇自身も「今様」を歌うことが大好きで、熱中し過ぎたあまり何度も喉を痛めてしまったと言われています。

そして、「今様」の流行がピークを迎えた頃、後白河法皇の命により「承安今様合(しょうあんいまようあわせ)」が開催されました。
承安四(1147)年、九月一日より十五夜にわたり、後白河法皇の御所法住寺殿において、 「今様」に堪能な公卿三十人が集められ、毎夜一番ずつを披露しその優劣を競ったそうです。

このように「今様」を心から愛した後白河法皇が、「今様」を後世に残したいとの思いで編纂したのが、 『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』という「今様」の歌謡集です。
歌謡集と口伝集から成り、歌謡集には数多くの「今様」の歌が掲載され、口伝集には実際の歌い方などが紹介されているそうです。

有名な歌を2つ、ご紹介しましょう。

遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ 舞え舞え蝸牛、舞はぬものならば、馬の子や牛の子に蹴させてん、踏破せてん、真に美しく舞うたらば、華の園まで遊ばせん

(上記の歌2首は、ウィキペディア「梁塵秘抄」の項より引用)

どちらの歌も、声に出して読むと音の響きが良く、身近なことをテーマとしていて少しユーモラスにも感じます。

現代によみがえる今様、「今様歌合わせの会」

法住寺 旧御陵正門

法住寺 旧御陵正門

前項でご紹介した「承安今様合」の舞台となった、法住寺。
そのゆかりの地で、毎年10月第2日曜日には「今様歌合わせの会」が行われます。

その日に出されたお題にちなんで、歌人二人ずつが歌を作り、歌い手により朗詠されます。
二つの歌の優劣が競われ、優れていると判断された歌については、雅楽器の演奏と優雅な舞いが舞われる中、再度朗詠されることになります。

石碑「あそびをせんとや うまれけん」

石碑「あそびをせんとや うまれけん」

法住寺ご住職の赤松圭祐さんに、「今様」と仏教の関係、そして歌合わせの会の見どころについて伺いました。

「今様が流行した平安時代末期は、権力闘争や争乱などにより世の中は混乱をきわめてゆきます。
明日、生きていられるかどうかわからない、という大変しんどい時代です。
そのような時代に、多くの人々は仏教に救いを求めました。
そして実は、今様歌には、仏教の教えに関するものが多くあります。
『梁塵秘抄』の中にも、仏典を訳した歌が出てくるほどです。
仏典をそのまま読んでも理解するのは難しいのですが、今様歌では仏典の内容をわかりやすい言葉で表現していて、なおかつ当時流行のメロディにのせて歌います。
人々が今様に夢中になったのには、その時代背景と仏教への関心があると思います。

今様歌合わせの会の一番の見どころは、歌を作る・歌う・舞う・雅楽を演奏する、それら全てが即興で行われることです。
歌人は、当日に出されたお題をもとに、歌を作る。
歌い手は、言葉の意味を表現するように歌う。
時にゆったりと、時にすばやく、感情をこめて歌います。
そして歌に合わせて、舞いと演奏が行われるのです。

うれしいことに、この会を見に来て下さった方の中から、飛び入りで歌を作ってくださる方が毎年2~3名ほどおられます。
素晴らしい歌が多く、私も楽しみにしています。」

平安装束に身を包んで行われる、古式豊かな催し「今様歌合わせの会」。
秋の京都で、平安時代の風雅な時間をどうぞお楽しみください。

※本文中、敬称は略させていただきました。
※掲載内容は、2012年10月時点、弊社で調べた情報によるものです。
最新の正確な情報につきましては、各企業・各店舗・その他各団体へご確認ください。